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大阪地方裁判所 昭和43年(行ウ)722号 判決

大阪市西区江戸堀三丁目一二五

原告

木村己之助

右訴訟代理人弁護士

鈴木康隆

片山善夫

豊川正明

松井清志

臼田和雄

稲田堅太郎

梅田満

右鈴木康隆訴訟複代理人弁護士

桐山剛

大阪市西区江戸堀五丁目一二三

被告

西税務署長

多田正友

大阪市東区大手前之町

被告

大阪国税局長

徳田博美

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番地

被告

右代表者法務大臣

稲葉修

右被告ら訴訟代理人弁護士

松田英雄

右被告ら指定代理人

宗宮英俊

中川平洋

中谷透

鬼束美彦

被告署長および被告局長指定代理人

今福三郎

山中忠男

河本省三

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

(原告)

1. 被告署長が昭和四一年六月一一日付で原告に対してなした原告の昭和四〇年分所得税の総所得金額を一、〇三三、二〇〇円とする更正処分のうち七七五、〇〇〇円を超える部分を取消す。

2. 被告局長が昭和四三年四月一六日付で原告に対してなした前項更正処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決を取消す。

3. 被告国は原告に対し、五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年六月一七日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

4. 訴訟費用は被告らの負担とする。

5. 第3項につき仮執行宣言。

(被告ら)

1. 主文同旨。

2. 仮執行免脱宣言。

第二、当事者の主張

(請求原因)

一、原告は、紙器製造業を営むものであるが、昭和四〇年分所得税につき、被告署長に対し、白色申告により総所得金額を七七五、〇〇〇円とする確定申告をなしたところ、被告署長は、昭和四一年六月一一日付で右総所得金額を一、〇三三、二〇〇円とする更正処分をなした。原告は、これを不服として被告署長に対し異議の申立をなしたが棄却されたので、被告局長に対し昭和四一年一〇月一九日審査請求をなしたところ、被告局長は、昭和四三年四月一六日付でこれを棄却する旨の裁決をなし、同月一八日裁決書の謄本が原告に送達された。

二、しかし被告署長のなした本件更正処分には次のような違法がある。

1. 昭和四〇年における原告の総所得金額は七七五、〇〇〇円であるから、本件更正処分は原告の所得を過大に認定した違法がある。

2. 本件更正処分の通知書には理由の記載がないところ、これは不服審査制度における争点主義に違反する。

3. 本件更正処分は、原告の生活と営業を不当に妨害するような方法による調査に基づきなされた違法なものである。

4. 原告は、西商工連合会および大阪商工団体連合会の会員であるところ、本件更正処分は原告が右商工会の会員である故をもって他の納税者と差別し、かつ商工会の弱体化を企図してなされたものである。

三、被告局長のなした裁決には次のような違法がある。

被告局長は、原告が昭和四三年六月二二日被告局長に対し、原処分庁の弁明書の副本の送付方および更正処分の理由となった事実を証する書類の閲覧を請求したのに、何らの通知、回答もなさなかった。したがって本件裁決は、行政不服審査法二二条、三三条に定めた手続を履践せずになされたものである。

四、被告国は、次の理由により、原告に対し損害賠償をなすべき義務がある。

被告局長は、原告がなした審査請求に対し、速やかに裁決をすべきであり、またそれができたのに故意にこれを遅延させ、二年間も放置して、原告の簡易迅速に行政救済を受ける権利を違法に侵害した。またこの間被告署長は、本件更正処分に基づき原告の土地を差押え、一時原告の右財産の利用を妨害した。原告は、これらにより有形無形の損害を蒙ったがこれを慰藉する金額としては五〇、〇〇〇円を下らない。

右損害は、被告国の公権力の行使にあたる公務員である被告局長、同署長の違法な職務執行により生じたものであり、したがって被告国は、国家賠償法一条に基づき右損害を賠償すべき義務がある。

五、よって原告は、被告署長に対し本件更正処分の取消しを、被告局長に対し本件裁決の取消しを、被告国に対し、損害金五〇、〇〇〇円およびこれに対する不法行為の日以後である昭和四三年六月一七日から支払済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する被告らの答弁)

一、請求原因一項の事実は認める。

二、同二項のうち更正処分の通知書に理由の記載がないことは認めるがその余は争う。

三、同三項は争う。仮に原告主張の如く原告が昭和四三年六月二二日に原処分庁の弁明書の送付方および書類の閲覧の請求をなした事実があるとしても、本件裁決は同年四月一六日付でなされ、裁決書の謄本は同月一八日原告に送達されているのであるから、右各請求は、審査手続が完結した後になされたものであり、これに対し何らの回答をしなかったとしても本件裁決には何らの違法もない。

四、同四項のうち、被告署長が原告所有の土地を差押えたことは認めるがその余は争う。

(被告署長の主張)

原告の昭和四〇年分の所得額は別表A欄記載のとおり一、一〇七、九一八円であり、この範囲でなされた本件更正処分に違法はない。以下必要部分につき説明する。

1. 大港食品株式会社からの収入金額

原告は、同訴外会社からの収入金額のうち七四、五八〇円は約束手形により受領したが同訴外会社が昭和四〇年末倒産し右手形が不渡となったので右金額は収入金額から控除すべき旨主張する。しかし、所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年中において収入すべき金額とする旨定められており(所得税法三六条一項)、昭和四〇年中に収入すべき右約束手形の金額は、たとえこれが不渡、未収となったとしても、総収入金額から控除する理由はない。かりに右主張が貸倒損失の主張であるとしても、訴外会社は昭和四一年一一月頃においても事業を継続しており、債権回収の見込がないことが確実となっていたものではない。

2. 火災保険料

原告が昭和四〇年中に支払った原告所有の建物に対する火災保険料は五、七六〇円であるが、右建物は居住用と事業用とに供されており、事業供用部分の割合は二分の一であるから、前記保険料額の二分の一の二、八八〇円が必要経費となる。

3. 雇人費

(イ)  川端満子 二〇〇、〇〇〇円

同訴外人は、昭和四〇年中原告方に継続して勤務しており月給は一五、〇〇〇円であり、ボーナスは年間二〇、〇〇〇円であった。したがって同訴外人への支給額は次式のとおり二〇〇、〇〇〇円となる。

一五、〇〇〇円×一二ケ月+二〇、〇〇〇円=二〇〇、〇〇〇円

(ロ)  江口ちえの 六〇、〇〇〇円

同訴外人はパン屋を営んでおり、原告方が多忙な夏場と冬場の合計六ケ月間、一ケ月平均二五日原告方に勤務し、その日給は四〇〇円であった。したがって、同訴外人への支給額は次式のとおり六〇、〇〇〇円となる。

四〇〇円×二五日×六ケ月=六〇、〇〇〇円

(ハ)  川端弘子 六、〇〇〇円

(ニ)  江口けい子 四、五〇〇円

(被告署長の主張に対する原告の答弁)

被告署長主張の所得金額およびその明細に対する認否および原告の主張額は別表B欄記載のとおりであり、以下争う部分につき説明する。

1. 大港食品株式会社からの収入金額

被告署長主張の同訴外会社からの収入金額七六四、八一五円のうち七四、五八〇円は約束手形により支払を受けていた。ところが、同訴外会社が昭和四〇年末に倒産し、右手形が不渡となり支払を受けることができなかった。したがって、前記収入金額から前記手形の金額を控除すべきである。

2. 荷造運賃費

被告署長主張の金額は荷造費用のみであり、運賃は含まれていない。したがって、運賃を加えるべきである。

3. 旅費通信費

被告署長主張の金額は電話料金のみである。原告は、昭和四〇年当時兵庫県三田市内の株式会社アニマルと取引をしており、一ケ月に平均二回阪神高速道路、近畿自動車道を利用して同訴外会社へ製品を納入していた。右道路の一回の利用料金は、阪神高速道路が一五〇円、近畿自動車道が一〇〇円であったので一往復五〇〇円を要し、年間少なくとも一二、〇〇〇円の高速道路の利用料金を要した。したがって、前記電話料金に高速道路の利用料金を加えれば五〇、二三七円となる。

4. 火災保険料

原告は、原告所有の建物についての火災保険料として昭和四〇年中に五、七六〇円を支払った。

5. 雇人費

(イ)  川端満子 二二〇、〇〇〇円

同訴外人は昭和四〇年中継続して原告方に勤務していたが、同訴外人の月給は一五、〇〇〇円であり、またボーナスを二〇、〇〇〇円宛二回合計四〇、〇〇〇円支給した。

したがって、同訴外人への支給額は次式のとおり金二二〇、〇〇〇円となる。

一五、〇〇〇円×一二ケ月+四〇、〇〇〇円=二二〇、〇〇〇円

(ロ)  江口ちえの 一八四、〇〇〇円

同訴外人は年間を通じて勤務しており、その月給は一二、〇〇〇円であり、またボーナスを二〇、〇〇〇円宛二回合計四〇、〇〇〇円支給した。したがって、同訴外人への支給額は次式のとおり一八四、〇〇〇円となる。

一二、〇〇〇円×一二ケ月+四〇、〇〇〇円=一八四、〇〇〇円

(ハ)  川端弘子 六、〇〇〇円

(ニ)  江口けい子 四、五〇〇円

理由

一  請求原因一項の事実は当事者間に争いがない。

二1  原告の昭和四〇年分の所得額について

別表のうち。大港食品株式会社からの収入金額、荷造運賃費、旅費通信費、火災保険料、雇人費を除くその余の各費目については、当事者間に争いがない。そこで右争いのある費目について検討する。

(一)  大港食品株式会社からの収入金額

原告の同訴外会社に対する昭和四〇年中の売上額が七六四、八一五円であることは原告において明らかに争いはないので、これを自白したものとみなす。

成立に争いのない甲第一、二号証、証人木村房治、同神尾守の証言によれば、原告は右売上金のうち七四、五八〇円は同訴外会社が振出し引受けた為替手形で受領していたが、昭和四〇年八月一五日の支払期日に右手形が不渡となったことが認められる。ところで、所得計算の基礎となる収入金額は、税法上、その年中において収入すべき金額とする旨定められており(所得税法第三六条)、現実に収入のあった金額とは定められておらず、また、収入すべき金額とは、収入すべき権利の確定した金額と解され、したがって、一旦その年中の収入とすべき債権が発生した以上、その支払のための受取手形が不渡となったからといって、直ちにその手形金額を収入金額から控除すべきものではない。また、証人木村房治、同神尾守の各証言によれば同訴外会社は、その後昭和四一年一一月当時においても、なお事業を継続しており、かつ原告においても、右不渡となった手形金額について債権放棄をしていないことが認められ、甲第二号証によっても、昭和四〇年中に右債権の取立不能が確実となったものとは認めることができず、したがって、右手形金額については、昭和四〇年中の貸倒れ損失に該当するものともいえない。よって右不渡となった手形金額は、売上金額から控除すべきものではない。

そうすれば、同訴外会社からの収入金額は、七六四、八一五円となる。

(二)  荷造運賃費

証人神尾守の証言および、それにより真正に成立したものと認められる乙第二号証の一によれば、原告は昭和四〇年中に荷造運賃費として四、四三〇円を支出したことが認められる。原告は、右四、四三〇円は荷造費のみであり、他に運賃を加算すべき旨主張するが、右四、四三〇円以外に荷造運賃費を要したとの事実を認めるに足る証拠はない。よって、荷造運賃費は四、四三〇円となる。

(三)  旅費通信費

証人神尾守の証言、前掲乙第二号証の一および弁論の全趣旨によれば、原告は昭和四〇年中に三八、二三七円の電話料金を支出したことが認められる。原告は、右の外兵庫県三田市内の株式会社アニマルヘ製品を納入するにつき利用した阪神高速道路、近畿自動車道の利用料金を加算すべき旨主張するところ、いずれも成立に争いのない乙第四、五号証によれば、阪神高速道路のうち中之島・池田間が開通したのが昭和四二年以降であり、近畿自動車道は昭和四〇年一二月三一日現在開通区間はなく、中国縦貫自動車道のうち吹田・宝塚間が開通したのが昭和四五年であることが認められ、また、中国縦貫自動車道の宝塚以西が開通したのが昭和四五年ないしそれ以降であることは公知の事実である。右事実と原告の事業所のある大阪市西区と兵庫県三田市との位置関係とを総合すれば、昭和四〇年当時、原告方から兵庫県三田市へ赴く際原告主張の如き高速道路を利用することはあり得ず、原告の主張を認めることはできない。よって、旅費通信費の額は三八、二三七円である。

(四)  火災保険料

原告が昭和四〇年中に原告所有の建物につき支払った火災保険料が五、七六〇円であることは当事者間に争いがない。証人木村房治、同神尾守の各証言によれば、原告は右建物を居住用事業用とに供していること、そして事業用に供している割合はその二分の一であることが認められる。したがって、前記保険料の二分の一の二、八八〇円を必要経費とするのが相当である。

(五)  雇人費

原告が昭和四〇年中に雇人費として訴外川端弘子に六、〇〇〇円、同江口けい子に四、五〇〇円を支払ったことは当事者間に争いがない。

訴外川端満子が昭和四〇年中継続して原告方に勤務し、その月給が一五、〇〇〇円であったことは当事者間に争いがない。証人神尾守の証言およびそれにより真正に成立したものと認められる乙第二号証の三によれば、原告が同年中に同訴外人に二〇、〇〇〇円のボーナスを支給したことが認められる。原告は、同訴外人に二〇、〇〇〇円宛二回合計四〇、〇〇〇円のボーナスを支給した旨主張するところ、証人木村房治の証言によってもその金額が明らかでなく、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。そうすると、同訴外人に対する昭和四〇年中の支給額は次式のとおり金二〇〇、〇〇〇円となる。

一五、〇〇〇円×一二ケ月+二〇、〇〇〇円=二〇〇、〇〇〇円

証人木村房治、同神尾守の各証言、成立に争いのない乙第三号証によれば、訴外江口ちえのは、パン屋を営んでおり原告方が多忙な夏場と冬場の合計六ケ月間原告方に勤務したこと、そして勤務時間は午後四時から午後九時迄であり、勤務日数は一ケ月平均二五日であったこと、また給料は一時間につき八〇円であったことが認められ、右認定に反する証人木村房治の証言部分は前掲各証拠に照らし、たやすく採用できず他に右認定を覆すに足る証拠はない。原告は同訴外人に対し二〇、〇〇〇円宛二回合計四〇、〇〇〇円のボーナスを支給した旨主張するところ、右主張事実を認めるに足る証拠はなく、また前記認定の同訴外人の勤務形態からして原告の右主張はたやすく認めることはできない。そうすれば、同訴外人に対する昭和四〇年中の支給額は次式のとおり金六〇、〇〇〇円となる。

八〇円×五時間×二五日×六ケ月=六〇、〇〇〇円

したがって、昭和四〇年中の雇人費の額は合計二七〇、五〇〇円となる。

以上によれば、原告の昭和四〇年分の総所得金額は、別表C欄のとおり一、一〇七、九一八円となる。そして本件更正処分の総所得金額一、〇三三、二〇〇円は、右認定金額の範囲内であるから、本件更正処分には所得過大認定の違法はない。

2  手続的違法の主張について

原告は、本件更正処分の通知書に理由の記載を欠く違法がある旨主張する。しかし、原告が白色申告者であることは当事者間に争いがなく、白色申告者に対しては更正の理由附記は法律上要求されていないから、右主張事実は何ら違法事由とはならない。

また、調査方法の違法、差別取扱および他事考慮の主張については、これを認めるに足りる証拠がない。

よって、手続的違法の主張はいずれも採用できない。

三  原告は、被告局長に対し、昭和四三年六月二二日原処分庁の弁明書の副本の送付方および書類の閲覧の請求をなした旨主張するところ、被告局長の本件裁決が同年四月一六日付でなされ、その謄本が同月一八日原告に送達されたことは当事者間に争いがなく、したがって、仮に右主張の各請求がなされた事実があるとしても、それは審査請求に対する手続が終了した後になされたものであり、これに対し、被告局長が何らの回答をしなかったとしても、それにより本件裁決が違法となるものではない。

四  原告が、昭和四一年一〇月一九日被告局長に対し審査請求をなし、被告局長が昭和四三年四月一六日付で本件裁決をなしたことは当事者間に争いはない。右事実によれば、審査請求から裁決までの期間は約一年六ケ月であるが、被告局長が同種事案を大量的に処理しなければならない実情にあったことを考慮すれば、この程度の遅延をもって、直ちに原告の速やかに行政救済を受ける権利が侵害されたとはいい難い。また、本件更正処分には前示のとおり違法が存しないのであるから、被告署長による原告所有土地の差押(この事実は当事者間に争いがない)も違法ということはできない。

五1  なお付言するに、原告は、本件口頭弁論終結後新たに次のとおりの主張をし、新たな甲号証の写(第三ないし第五号証)を添付して口頭弁論再開の申立をなしている。

(一)  仕入金額は、一、五四六、〇八七円である。

(二)  公租公課は七六、三五〇円で、その明細は、個人事業税二四、五六〇円、市府民税二〇、五五〇円、所得税七、九八〇円、自動車税三、四六〇円、固定資産税一九、八〇〇円である。

(三)  旅費通信費は金四四、八三七円である。高速道路利用料金に関する主張は撤回するが、原告は、自動車駐車場の料金として年間六、六〇〇円を要したので、これを電話料金に加算すると四四、八三七円となる。

(四)  大港食品株式会社の不渡手形金七四、五八〇円については、提出済の甲第二号証により明らかなとおり、その配分率は〇・一一パーセントであり、回収不能とみるべきである。

2  そこでこれを検討するに、右主張の公租公課のうち、市府民税および所得税は必要経費には算入されない(所得税法四五条一項二、四号)。また、前記添付の甲第四号証の写によれば、個人事業税二四、五六〇円のうち、昭和四〇年に賦課された本税は八、五〇〇円で、他は昭和三九年分および延滞金であり、また、固定資産税一九、八〇〇円のうち昭和四〇年に賦課された本税は九、〇〇〇円で他は昭和三九年分および延滞金であり、自動車税三、四六〇円のうち本税は三、三三〇円で他は延滞金であることが認められ、これらのうち延滞金は必要経費には算入されず(同法同条同項三、五号)、また、昭和三九年分の各税は同年分の必要経費となるべきもので、昭和四〇年分の必要経費とはならない。そして、前掲乙第二号証の一および弁論の全趣旨によれば、右昭和四〇年分の個人事業税、自動車税および固定資産税のうち事業用の必要経費とされる部分は、別表の公租公課二九、三三〇円の中に含まれていることが認められる。したがって、原告の前記公租公課に関する主張は採用し得ない。

また、大港食品株式会社からの収入金額に関する主張については、前記二項1(一)認定のとおりであり、右主張も採用し得ない。

そうすれば、仮に仕入金額および旅費通信費が右主張のとおりであったとしても、原告の昭和四〇年分の総所得金額は一、〇七五、九四五円となり、本件更正処分の総所得金額は右金額の範囲内であるから、本件更正処分には所得過大認定の違法はないこととなる。

したがって、本件口頭弁論を再開して前記原告の主張について審理をしてみても、結局本判決の結論には影響を及ぼさないので、本件口頭弁論の再開はしないこととする。

六  よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥村正策 裁判官 寺崎次郎 裁判官 山崎恒)

所得計算表

〈省略〉

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